食事時間が健康やダイエットにも影響する?時間栄養学からみる健康維持のポイント

皆さんは普段、食事をいつ、どのくらいの時間をかけて食べていますか。最近では、健康維持のために「何を食べるか」だけでなく、食事時間や食べ方などが重視されるようになってきています。

「年齢とともに太りやすくなった」
「血糖値が気になる」
「規則正しい食生活をしたい」

という方に役立つ食生活のポイントをお届けします。ぜひご覧ください。

健康に影響を及ぼす食事時間

健康維持やダイエットを考える上で、カロリーや栄養を気にされる方は多いのではないでしょうか。
しかし近年、栄養学の世界では、2017年のノーベル医学・生理学受賞を機に、
いつ、どのように食べるのか」に着目した時間栄養学の考え方が浸透しつつあります。

出典:「食生活改善指導担当者テキスト」(厚生労働省)

時間栄養学とは?

時間栄養学は、体内時計と食事の相互作用を研究する学問です。

従来の栄養学は、健康を維持するために「何をどのくらいの量食べるか」を研究対象としてきました。一方、時間栄養学は、食事時間が体内時計に及ぼす働き探り、「いつ、どのように食べるのか」という問いにアプローチしています。

体内時計と食事の関係性

全ての細胞に存在する体内時計は、大きく2種類に分けられます。


内臓機能にも影響を与える体内時計は、
乱れを放置すると肥満や糖尿病、がんなども引き起こしかねないといわれています。


もともと人の体内時計は24時間より少し長めです。その遅れのリセットに有効とされているのが、太陽光を浴びて朝食を摂ることです。中枢時計は太陽光でリセットされ、末梢時計は朝食や運動などでリセットされます。

朝食・昼食・夕食の食事時間はいつがいい?

食事に適したタイミングはあるのでしょうか。時間栄養学が提唱する食事時間の目安は次のとおりです。

朝食の時間

朝食の時間帯は、起床後2時間以内が基本です。

先に述べたとおり、朝食を摂ると末梢時計がリセットされます。また、前日の夕食から朝食までの絶食時間を10時間以上空けることも、体内時計を維持する上で重要です。

昼食の時間

消化・吸収は昼頃に高まっているため、12~13時の昼食がおすすめです。

ビーマルワン」と呼ばれるたんぱく質は脂肪蓄積に関与しており、18時頃から増え始めて、22時以降に急増すると知られています。昼食を遅い時間に摂ると、その分夕食の時間帯も遅くなり、脂肪が蓄積されやすくなるので、昼食は昼頃に済ませておくと安心です。

夕食の時間

「ビーマルワン」による脂肪の蓄積を防ぐために、21時以降の夕食は避けましょう

胃に食べたものが残っていると眠りの質が下がることから、就寝の3時間前までに食事は済ませておきたいところです。

時間栄養学からみる食事のポイント

次に、時間栄養学の観点から健康的な食事を効率的に摂取するポイントを解説します。

食事量は朝:昼:夕=3:3:4が目安

食欲や時間がなくて、朝食や昼食抜きが当たり前になっていませんか。時間栄養学では、食事は朝、昼、晩に分け、3:3:4の割合で食べることを推奨しています。

朝食は体内時計を維持する上で重要な役割を果たすことから、昼食や夕食と同程度のエネルギー摂取が望まれます。

朝食は炭水化物とたんぱく質を十分に摂取

朝食で体内時計のリセットを促す栄養素が炭水化物とたんぱく質です。

朝食は、ごはんとみそ汁、パンとコーヒーなど、簡単に済ませる方も少なくありませんが、その内容の食事では、特にたんぱく質が不足する傾向にあります。

たんぱく質は、朝食で摂取すると筋肉量の増加につながると分かっていることから、肉や魚、卵、乳製品などを積極的に朝食へ取り入れてみましょう。

1回目の食事が2回目以降の食事にも影響を与える「セカンドミール効果」の観点からみても、
朝食だけでなく、昼食や夕食時の血糖値も抑制するとの研究報告がある高たんぱくな朝食はおすすめです。
(※ただし、昼食を抜くと、夕食の血糖値抑制効果が減少するため、この場合を除く)

出典:ケイシャオ、古谷 明子、佐々木 宏幸、高橋正樹、柴田 重信. 健康な成人の朝食時の高タンパク質食が夕食時の食後血糖値に及ぼす影響. MDPI,2022.

セカンドミール効果とは、トロント大学のジェンキンス博士が1982年に発表した
理論。
1日で最初の食事が2回目の食事(セカンドミール)の血糖値に作用すると考えた。

出典:「時間栄養学とは - 時計遺伝子と食事のリズム -女子栄養大学

間食は16時ぐらいまで

「ビーマルワン」による脂肪蓄積は、朝6時~16時の間に低下しています。
この時間帯に食べたものは、脂肪として蓄積されにくい傾向にあります。

昼食だけでなく、間食も16時ぐらいまでに済ませておきたいところです。

夕食が遅い時間になりそうなときは"分食"しよう

「仕事や学校などで夕食が21時を過ぎてしまい、おなかが空いていっぱい食べてしまう……」。そんなときは、食事を複数回にわける"分食"にしてみませんか。

例えば、夕方頃に腹持ちの良いおにぎりやサンドイッチ、乳製品、バナナなどを食べ、21時過ぎにたんぱく源や野菜などの軽い食事を摂ると、食べ過ぎを防げます。

血糖を起こさないための食べ方の工夫

高血糖状態を放置していると血管に大きな負担がかかり、糖尿病や動脈硬化を進行させます。食事時間とともに、次のような血糖値上昇を抑制するための食習慣も毎日の食生活のなかで実践していきましょう。

食事は「ベジファースト」が基本

血糖値の上昇を緩やかにするには、食物繊維が豊富な野菜→たんぱく質→炭水化物の順に食事をすると良いといわれています。ベジファーストは、野菜を最初に食べることから名付けられました。

野菜以外にも海藻やきのこ、大豆など、食物繊維の多い食べ物であれば構いません。同じ野菜でもコーンやいも類は糖質が多く、時間をおいて摂ったほうが良い食材です。

炭水化物が多いご飯や麺類から食べてしまう食習慣がある方は、少しずつ改善してみませんか。

食事は20分ぐらいかけてゆっくり食べ

早食いは、急激な血糖値の上昇や肥満の原因になります。一般に、胃に食べ物が入り、血糖値が上昇して、脳の満腹中枢に刺激が伝わるまで大体20分といわれています。早食いをすると、脳が満腹感を得る前に食べ過ぎてしまうため、注意が必要です。

よく噛み、20分程度かけて食べるには、噛みごたえのある食材を選んだり、会話をしながら食事をしたりといった工夫をすると良いでしょう。

科学の力で毎日の食事を見直してみよう

「血糖値が高い」「ダイエットがうまくいかない」など、食事と健康に関するお悩みがなかなか解決しないときは、食事のタイミングやどのように食べるかなどにフォーカスしてみるのも一つの方法です。目覚ましい発展を遂げている時間栄養学の力を借りて、効率的に健康な身体を目指してみませんか。

参考文献

厚生労働省:「e-ヘルスネット 体内時計

厚生労働省:「食生活改善指導担当者テキスト

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構:「時間栄養学

早稲田大学:「ノーベル賞で話題の「体内時計」は「時間栄養学」でコントロール

Glico:「朝食におけるタンパク質の重要性

社会福祉法人恩賜財団済生会:「『いつ』『なにを』『どのように』食べるかがポイント! 時間栄養学で体内時計を整える

ケイシャオ,古谷 明子,佐々木 宏幸,高橋正樹,柴田 重信.健康な成人の朝食時の高タンパク質食が夕食時の食後血糖値に及ぼす影響.MDPI,2022 年.